エレベーター

ある、大手商社勤める多加子は今年で32になる。
友達や、同僚は次々と寿退社していき、
同期の女子社員は多加子のみとなった。多加子は結婚を急ぐ友達達を責める気は毛頭なかった。
もともと、この会社の女子社員達は
男子社員達の嫁候補として入社が決まったような物だったからだ。

 一時期人事部にいた、経験を持つ多加子はそれを心得ながら黙認していた。
ある意味、利害一致かもしれないと思ったからだ。
 そう言えば確かに容姿で選ばれたのかと、疑いたくなるような顔の整った新入女子社員は多い。多加子もそっちの部類に入った。
ただ、多加子を起用した人事部が誤算だったのが、
多加子が桁違いに仕事ができたことだ。
多加子は32で幹部候補になってしまったのだ。

 コレには多加子も驚いた。たまたま出した企画がたて続けに客に受けヒットしたのだ。


さらに多忙になった多加子は友人が出会いに励む時間をことごとく削られ、
仕事が出来過ぎたため「お硬い」というレッテルをはられたまま32になった。
これは多加子の誤算である。

 彼女も当初は寿退社だと、漠然とおもっていたからである。
仕事は楽しいが正直そろそろマズイと思っていた。
しかし、彼女は相変わらず多忙だった。彼女が抜けれは仕事は滞る。
部下は多加子を上司と慕っている。その、若いコ達を裏切れない水準に来ていた。

 既に10時を回った会社はやけに静かだった。ノートパソコンの電源を切る。
凄く熱くなったその機械を撫でてみる。
企画を練っていたのだ。家でははかどらないからだ。
フロアをでて、警備員のおじさんに挨拶をする。いつもの行為だ。

 ただ、いつもと違っていたのは、隣の部である男子社員が
エレベーターの前の休息のフロアにいたことだ。
「あ・・・笹峰くんじゃないの?どうしたの、こんな遅くまで」
人気のナイ大きなビルの中人を見つけたら駆け寄ってしまう程自分は弱かっただろうか?ふと心の中で自分を戒めながら、彼に近付く。
笹峰は、隣の部で期待の新人と目されていて、たしか歳は25だったかな。
女子社員の噂を聞いた。確かにかっこいい。

 「宮本先輩・・」彼は吸っていた煙草の火を吸い殻に押し付けた。
「仕事?」聞くが彼は首を降る。
「先輩帰りませんか?」
「え?あ・・今帰るけど・・」
「じゃなくて一緒に」
まるで中学生のような誘いの言葉に「いいわよ」と素直に答えてしまう。

 今まで彼氏はいた。しかも同じ会社に。
だが2年前リストラにあってから彼は荒み、一方的に降られてしまった。
すでに彼女の方が上司になっていたのも起因している。
エレベータ−に乗り込み階を押す。先に口を開いたのは笹峰だった。

 「先輩って彼氏はいないんですか?今」今・・という言葉は多加子を斬り付けた。
「いないわよ。なんで?」
その時だエレベータ−の向かって左に立っていた笹峰は
エレベーターのあるボタンを押した。
−緊急停止ボタンだ!!
「ちょ、ちょっと、何止めてるのよ!」ぎょっとした。
多加子は高い所が苦手だ。今地上十数階で中吊りと思うだけで脚が震えた。
ちょうど階と階の間らしい。小窓からは何も見えない。

 「先輩にも怖いものあるんですね」ちょっと笑ったように笹峰は言う。
後輩にバカにされてたまるか!と思い強がる。
でも、ホントにまじで怖い。
「とにかく!悪戯は辞めて、エレベーター動かしましょう!」
と解除ボタンを押す。・・・・・動かない。
「停電ですかね?」
まだ、可笑しそうに、笹峰は近付いてきた。「密室ですね」という。

「ちょっ、、、どうするのよォ」もう、脚だけではなくカラダが恐怖で震える。
マジ情けない・・。
こんな姿を後輩にさらすなんて・・・悔しいのと恐怖で震えていると、
「先輩」とぎゅっと笹峰が抱きすくめてきた。何かいい匂いがした。

 「あ〜!もぅ、なにするのよ・・」
いつもならこんなのさせっぱなしにはしないだろう。
でも今はちよっと消耗状態だった。
人の体温が暖かい。もうずっと感じていなかった人のあたたかさ。
自然と落ち着いてきた。イイ奴じゃない・・・と少し笹峰の好感度が回復したところで、何を思ったのか、笹峰が多加子にキスをした。ただ重ねるだけのキス。
それが次第に激しく強引になってくる。
多加子はその時気付いた。自分の腰のあたりにあたる笹峰の高ぶった気持ちに。

 こいつはあたしを性欲の糧にしようと言うのか。
唇の下で悲しさと本の少し「これからどうなるんだろう」と
静観を決め込む体勢に入ろうとする自分を見た。
その姿は自分が弱くなった証拠のような気がした。
若くは歳をとるんだから無理だ。でも強くあろう、と自分を支えて生きてきた。
2年前のその日から・・・強くあることで崩れそうな自分を繋いで生きてきた。

 それを笹峰は切開し目の前にさらした。憎らしくもあり、悔しかった。
「あんたに何が解るの!?」と叫びたかった。
でも、口は息をするのもやっとだった。完全に主導権は向こうにある。
塞がれ、呼吸の自由も奪う。やっと口を離しても多加子の息は荒かった。
それだけ激しいキスだった。
「先輩・・・いいですか?」何がいいのか、分かっていたが答えてはやらなかった。
でも、不思議と叫ばず、静観する方に心がいったらしい。

 だから、代わりに高ぶったものをズボンの上から、撫でてやった。
「せ・・・先輩」思わぬ痴女的な行為に若い物は素直に反応している。
さっきの嫌悪感はもうなく、先を見据える自分がいた。

  ブラウスボタンを外し胸を触ってくる。大きな手が冷たく冷えたカラダに体温を還す。多加子の後ろに回って指で胸を強く揉む。
「・・・ンッ・・はぁぁ」ついに声が出た。
笹峰の口は愛おしむように多加子の耳や首筋を舐める。
太ももに触れた手がやさしく太ももを撫でている。
そしてまるで偶然のようにスカートに侵入する。
「あッ。待って。。」小さく声を漏らす。
「なぁに?どうしたの?」優しく聞き返してくる。敬語ではない。
何か上司とヒラだとか、会社だとかが遠い世界にいくようだ。
笹峰巧みに多加子が必死に築いた壁を崩す。突破する。
多加子も上司の多加子ではなく普通の女になろうとする。

 「待って・・・だめ・・」
「なにがだめなの?言って。怖い?」
「違うの・・」ストッキングと下着の上からでも解るぐらい湿っていた。
「こんなにして、怖いの?」「ち・・・違うの」「見せて。ダメ?嫌?」
ストッキングの上から指でなぞる。形をさがすように。焦れて焦がれるように。
「どうしたらイイ?言って」「あ・・・・」
ためらうように言葉を切る。でもたまらず声は出た。
「あ、、、ほしいの」「何が?言わなきゃわかんないよ」
そういって、自分の熱くなった物を出して、わざと後ろの穴を狙ってみせる。
ストッキングがさけそうな程。

 「うぅん。違うのォ。こっちにほしいの」思わず手で硬くなった物を誘導してしまう。でも、ストッキングが邪魔になる。
そこで、笹峰は容易くストッキングを裂いた。
ちょうど侵入できるぐらいの大きさに。
そして、ゴムをどこからかだし、かぶせる。
そして、ストッキングを押し開き中の下着のあいだから、うしろから、差し入れた。
中は熱く濡れ既に摩擦感はなく難無く笹峰を迎えた。腰をおくに入れる。
「はぁぁん」やっと一番欲しかった物に触れて、安堵のような甘い声がでた。
一番奥は少し硬くなっていてソコに大きくなった亀頭が撫でる。
油送の早さに変化がつく度、声も同じく変化した。
体位を替え向き合い、抱き合いながら不安定な中セックスをくり返す。

 最後に笹峰が達したとき、もう何度とない絶頂が多加子を支配した。
それでも、まだ多加子の下の口は何度とない痙攣をくり返しながら彼を見送った。
最後に軽くキスをして身支度した。エレベーターはすごい熱気がした。

 ふと彼が背広から携帯を取り出しどこかに電話をした。
「はい。えっとエレベーターがとまったんですけど・・・やっぱり停電ですかぁはい。
 おねがいします。」
携帯を切った笹峰はニャリとした。
「先輩!携帯ですよ」「はぁ?」
「あんなにビビらなくても停電でも携帯はつかえるんですから」
「じゃあなんですぐにかけないのよ」
「せっかく先輩に告白するチャンスかな〜って、思って」
「もぉ〜。何も停電中じゃなくてもいいじゃない!ホントにこわかったんだからぁ〜」「でもあんなに乱れてたじゃないですか」
「ムカつく後輩ね」
なんだか素直な自分が忌々しかったが、不思議と気分がよかった。

 ほどなくしてエレベーターは作動した。どれぐらい止まっていたんだろう。
もう、12時近かった。
「先輩、うち一人暮らしで近いんですけど、、、きますか?」
夜道は危ないかもしれない。

 でも、このまま彼の家に泊まる勢いにはならなかった。
「大丈夫よ。終電あるもん。」ここが、多加子が20代では既にない所かも知れない。
もう昔みたいに勢いだけでは生きられない。
笹峰はそれに気付いてくれるかな。これは多加子の賭けだった。
「・・・うん。分かった。じゃあ、駅まで送るね」
そういって駅へとむかってふたりであるいた。なんとなく繋いだ手が暖かかった。
この手を信じたいとおもった。

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