ゴーストライト


しばらくして。
ベットで転がる少女。中で、といってもゴムの中なんだが。
デキちゃ不味い相手だし。
「エマ、だいじょーぶかぁ?」


こいつの名前はエマ。
本当の名前かどうかはしらない。
どうでもいいことだ。
「うん。咲ちゃん。平気」
全裸の白い肌はシーツの中で
まるで天使みたいにみえる。羽なんかありはしないんだけど。
細い四肢。
まだ幼さの残る女子高生だ。
ベットの下には脱ぎ捨てたプリーツスカートやブレザーが落ちている。

「ねぇ、もう少し、ここに居てもいい?」
「いーけど。もう少しで担当サン来るぜ?」
「ん〜じゃあ、服、着なくちゃあね」

エマと俺の関係は1年程になる。
エマとであったのは伝言ダイアルだった。
「援助交際」なんて、今でいえばタダの売春なんだが
当時小説が上手くいかなかった俺は荒んでいた。
ダイアルで適当に引っ掛けた女、それがエマだった。

「私エンコ−初めてだからよろしく〜」なんてヘラヘラした
少女がエマだった。
本当に「初めて」なのか、どうかなんて俺には関係なかった。
多少興味は持ったがそれはエマ独特の雰囲気からだった。
取りあえずホテルに行って早速エッチした。

「あたし小説かいてるんだぁ」といって彼女はノートパソコンを
生徒鞄から出した。鞄にはそれしか入っていなかった。
教科書も筆箱すらなかったことを
未だに覚えている。


「エンコ−してるコの話書いててね。心理、わかんなくって
 私もやってみたってワケ」
嬉々として答える彼女。
それが悪いことである事などもちろん知っての事だろう。
ただ、好奇心でそれが易々出来てしまうのが
若さの恐ろしさだ。

そのノートパソコンを見ると目を見張る程
面白い小説を書いていた。
小説を書いている者でなくても、その面白さは分かった。
それだけの小説だった。投稿すれば佳作以上は堅い。
ここまでの完成度の小説を彼女は書いていたのだ。
何故、投稿しないのか、聞いてみた。
「うち、親が厳しいんだ。一度投稿して、書いてみないか?って
 話が来たの。でも、親がすごい勢いで反対しちゃってさ。
 結局話は潰れたワケ」
そういう彼女の目には光があった。
硬質な、光り。くすぶっている俺とは異質の命。

俺はたまらず自分の仕事を明かした。
小説家であること。
一応書いているがほとんど売れないでいる事。
俺の話をエマはだまって聞いていた。

何度か逢ううちに家に連れていくようになった。
何度も何度もセックスした。
俺の小説で失っていくプライドを彼女の歓んだ声が
埋めてくれた。
そんなモノでしか、埋めれない惨めな自分には目を瞑った。
この頃にはもう、金銭のやりとりはなくなっていた。

やがて、担当から最後通告を受ける。
短編で枠をとった。次でヒットさせないと、
次の仕事をまわせないかも知れない、と。
俺は苦肉の作を考えてしまう。
そう、それは罪。

--ゴーストライターとしてエマに書いてくれるように頼んだのだ---。

エマは最初と惑っていたが、
承諾してくれた。
エマの書いた「今田咲也」の小説は大ヒットとなった。
その短編はシリーズ化された。
現在では4冊のシリーズを出し続けている。
まだまだ発展途上である。

「こんにちは〜!」
と玄関から担当の倉田が入ってくる。
倉田は女性の担当である。
二人以外唯一、このゴーストライターの事実を知っている。
知っている・・・というより黙認している。
この業界ではごくまれにあることである。
公にはしない。しても得などありはしないのだし。
「先生、書けましたか?」
「うん。今、印刷してる」
俺のワープロが規則的に印刷している。
紙が吐き出されている。


別室ではエマが寝ている。
「先生、読者アンケート、大御所の町田先生を押さえて
 2位でしたよ。月刊「紅葉」の!」
「そうですかぁ。
 あいつにも、教えてやらなくちゃな」
「エマ・・・・さんのことですか?」
「そォ」
別室の方を指差す。
倉田さんはため息をちいさくついた。

3話へ

 戻る

動画 アダルト動画 ライブチャット