ゴーストライト

エマの制服や指定鞄を思い出す。
必死に都内の私立の女子高を思い出す。
だが、それは断片てきなモノだった。

やっと高校に辿り着くとゆうに2時は回っていた。
生徒はまばらで、部活動の生徒が校舎周りをランニングしているのが
見える。
すこし待つのにエマはやってこない。

ゆっくり歩く。
ここから、都心は近い。
エマは学校から帰って寄り道しているかもしれない。
でも、どこで?
エマは放課後ってなにしてる?
まったく分からない。

ぼーっと歩いているウチに、
初めてエマとあった時の目印にした有名な芸術家の作ったオブジェの
前に来ていた。
オブジェは天使でも模しているのか羽がある。

ふと、近くのベンチを見る。
エマと同じ制服の少女がいた。
髪はボブでエマより利発な感じ。


紺の学校指定のソックス。紺のブレザー。
少女は携帯を慣れた手付きで扱う。
不意に着信音が弾ける。
「もしもし・・・、うん、今ハトオブジェの前」
ハトオブジェ、というらしいオブジェ。
「早くきなよ、エマ。メンバーはもう揃ってンだから」
といって少女は携帯を切った。
「え・・・ま?」
俺は少女の会話の中にエマの名を聞いた。

エマなんかそうある名前じゃない。
ここに待っていればエマにあえるかも知れない。
おれは、下世話を承知でそこで待った。
10分ほどしてエマが歩いてきた。私服姿だ。


「エマ!」俺は飛び出した。
エマは丸い目を見開く。
待っていた少女が来て
「エマ、この人知り合い?」と聞いてきた。
「・・・・まぁね」
エマは視線を俺から外す。
俺の聞いた事のナイ冷たい声だった。

「カズサ、先に「カフェル」いっといて。
 後からいくから。ごめん。着替えてて」
エマは「かずさ」という少女を行かせると俺と相対した。
「咲ちゃん・・・」
茶色の髪は今日は下ろしている。
ストレートの髪を巻き髪にしているので
幾分か大人っぽく見える。


服装もいつもより大人っぽい。メイクもはっきりとしている。
「エマ、、、。俺、、なんていっていいか、、、」
「うん。咲ちゃん、私、わかるよ」
エマは手を俺のほほに当てる。


「咲ちゃん、そろそろ自分で書きたいでしょ?私わかるもん。
 咲ちゃんはこんな所でダメになる人じゃないよ。
 次から、、、咲ちゃんかいてね」
「かけねーよ、俺はかけねーよ・・・。だけど
 そんな事はいい!
 エマ、いなくなるのか?俺の前から・・」
「うん。恐いから・・ね」
「え?」
俺が聞く前にエマは踵を返した。
俺のほほにはエマの暖かい手の残した温度だけが残った。
「んじゃあ、私いくからねっ」
と、にっこり笑う。
去っていくエマを俺は追う事ができなかった。

俺は自宅に引き返した。
エマ・・・エマ・・。
俺は繰り返す。
机に座ったまま。
俺はいつから、このデスクに座らなくなった?
自分の城を明け渡す恐怖と、エマへの畏怖。
投げ捨てることができない小説の仕事。
だからエマに頼って、そしてエマの出す結果に
毎回嫉妬した。


こんな小娘にできて、俺にはどうしてできないのか。
たかが16年生きた子供に、大人の俺が負けている。
こんな小娘に、小娘に、と思いつつ、目が離せなかった。
このまま、敷居のないままじゃいけないと思いつつ
けじめを付けようとはしなかった。

俺は、エマはここから、俺から離れないと、、、思っていた。
俺はエマの気持ち、知っていた。

俺の堂々回りの考えは数時間に及んでいたらしい。
こんなに物事を考えたのは、生まれて数えきれるほどだ。

プルルル・・・プルルル。
電話がなっている。
俺は少しの間無視していた。出るつもりにならなかった。
直に留守電に変わるだろう。きっと担当の倉田さんだ。

ピー。
「もしもし、、、咲ちゃん?」
エマの声だ。「エマ・・・」
「え〜〜〜と、ね。私今、初めてあった時にいた、オブジェのとこにいるの。
 いまから来れない?
 七時までまってるから」
ブツッ、と 留守電は途絶えた。
「エマ、、」
俺はジャケットを羽織って飛び出した。

あのオブジェまではそんなに遠くない。
俺は走った。

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