ゴーストライト

すこしして、人込みの中に、白いハトのオブジェと
その下の小さな少女をみつけた。
少女は俺を見つけた。


「お早い御到着で」
にっこりしてエマは言う。
「お・・・おう」
いきが切れて、碌に声が出ない。
「あはは。運動不足だぞ、咲ちゃん」
ケタケタ笑いながらいう。
だが、直にピタっと笑いが止まった。
「お別れ、言おうと思って」

「え?」
「あのね、エマが、部屋に出向いて言うのが礼儀なんだけど
 時間もないし、おまけにたぶん、咲ちゃんちだと
 思い出とか、いっぱいあるし気軽にセックスできちゃうわで
 多分言えないと思うから、言うね。
 いままで、ありがとう」
エマの言葉は高く、ひくく、響く。


エマが書いた小説以上に鋭い、言葉で。


「小説の、なんてゆ〜のかな?
 隠しの部分は部屋においといたCD-Rに簡単にまとめておいたから、、
 あとはそれを混ぜてて。
 本当にありがとね。小説家体験できて楽しかったよ。
 エマのコレからの人生に、小説家になれる可能性はないから、ね」
多分親の反対が関係しているんだろう、それはいい。
「エマ!話を聞いてくれよ・・・。
 俺、エマのコト・・・好きだよ! 」

少し間があく。
「好き・・・・か」
エマは独り言のようにいった。
「好き・・・ね」
そしてため息をついた。

「エマも好きだよ。大好き。咲ちゃんがエマに好きとか思う以前から
 ずっと好き。
 ほんとはね、小説なんか途中からどうでもよくなってた。
 手をぬいた気持ちはなかったけどいつも、どうしたら
 咲ちゃんと一緒にいられるかばっかり考えてた。
 理由の一つにしていたの・・・小説を。」
担当の倉田さんの言葉と交錯する。
俺は一体何を知った気でいたんだろう。


「一緒にいる理由、探してた。たまたまそれが小説で。
 でも、エマが書けば書くほど、
 咲ちゃんが辛そうなのも知っていた。
 だから、出会って1年の今日で、、、お別れしょうと思ってた」
はっとする。
たしか、エマと出会ったのは1年前の今日だ。
俺は呆然とした。俺はとっくに忘れていた。

と、突然着信メロディーがなりだした。
エマの携帯だ。
「うん、、、わかった。今からいくから!」
誰かからの電話か。あのカズサだろうか。
「・・・うんじゃあ、あたし行くね!咲ちゃん」
「お、おい待てよ!どこいくんだよ!」
行こうとしたエマはふっと止まる。

「ああ、咲チャンも来る?
 ちょうど男のコひとり来れなくなってたんだって。
 そしたら、分かるよ。
 私のコト、私達のコト・・・」
「合コンかよ〜?なんで?」
高校生に混じって合コンは気が引ける。
だが
「そんなモンだといいんだけどね」
その時エマが今まで俺に見せていた顔とは全く違う
なにかもっと、硬質な顔があった。
それでいて自虐的でありながら、サディスティックな笑みだった。

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結局俺は合コン?とやらに来てしまった。
ある地下のバーのような所だった。
合コンといえば居酒屋な、俺らとは違う趣向らしい。

支配人に慣れた手付きでカードを渡す。
「そちらさまは?」と支配人が聞くとエマは
「一人男の子で欠員が出たんで知り合いの方をつれてきたんです。
 大丈夫、身元は保証できますから」

といってマスクを渡された。
目に付けるタイプのマスク。
俺にマスクを付けながらエマはいう。
「絶対名字はいわないルールよ。
 あとマスクは化粧室以外で外しちゃダメ」
といってドアを開け放った。
中からは緩やかなクラシックがかけられていた。
十数人の男女がいる。どれも一見して
高校生とわかるルックスだ。

天井は低く、秘密のバーといったカンジだ。
普通の合コンのように、対座せず自由に動き回っている。
テーブルには美しいオードブルが盛られ、
ワインや、各種カクテルが上品に並べられている。

一人の少女が近寄ってきた。
昼間みた、カズサとよばれる少女だ。
チャイナティストの服を着ている。

「ああ、来たのね。ん?そちらは?」
俺に視線を向ける。
「あ、男のコ、欠員出たんでしよ?
 一人来てもらったの。
 ほら、カズサ年上がいいっていってたでしょ?」
エマの顔はますます硬質さわましていく。


マスクのせいで表情もろくに読み取れない。
「ホント、、、。あ、いい感じじやない。
 ねぇ、こっちにいきませんか?エマ、男のトコ1回いってきなよ」
エマは一瞬戸惑うが
「そうね。じゃあ、よろしく」
といって去っていった。

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